GAME OF THE LOTUS
← トップに戻る

The Dark Age of Tonos : TRPG World Guide

遠野洲戦記

v0.5 — 2026-04-13

ゲームマスター向け情報

ゲームを進行するためのヒントです。NPC、シナリオフック、道具や魔法の一覧など

GMへの手引き

トーノスは、山中の盆地にも関わらず、水に覆われた世界です。王なき世界に住む「湖沼人(レイクフォーク)」が主人公です。

覚えておくべき三つの柱

大洪水がすべてを変えた。沈んだ街、泥の中の財宝、霧に覆われる盆地。水はこの世界の原因であり、風景であり、資源である。

三つの民

平地人/山人/湖沼人。土地に根づく者、山に生きる者、どこにも属さない者。三者の交差点に冒険が生まれる。

王のいない時代

傀儡政権に裁定能力はない。正義は自分で決める。自由と混沌は同じ顔をしている。

セッションの手続き

1. 状況の提示

アッセンが仕事を持ってくる。あるいは異変が起きる。旅の途中で何かに出くわす。PCに選択肢を示す——受けるか、断るか、別の方法を探すか。

2. 探索と情報収集

現場に行く。人に聞く。まじないで占う。手がかりは自動で見つかる——判定が必要なのは追加情報を得るときだけ。手がかりはひとつのシナリオに2〜3用意し、ひとつ見逃しても先に進めるようにする。

3. 複雑化

別の勢力が介入する。天候が悪化する。怪異が現れる。PCの選択が状況を変える——良くも悪くも。ここが最も長く、最も楽しい時間になる。

4. 決断

PCが「自分の正義」を選ぶ瞬間。戦闘でも交渉でも儀式でもよい。正解はない。

5. 結末と余韻

結果を描写する。解決しなくてもいい。すべてが丸く収まる必要はない。次のセッションの種を残す。

失敗したらどうなるか

判定に失敗しても物語は止まらない。「何も起きない」は最悪の結果であり、避けるべきである。

  • 手がかりは見つかる。ただし代償がある——泥潜りが箱を揚げた。しかし水底で何かに見られた
  • 時間が過ぎる。状況が悪化する——繭語りに話を聞きに行ったが、着いたときには村を出た後だった
  • 別の道が開く。望んだ道は閉じる——寺院に潜入できなかった。しかし寺院の僧が外に出てきた——追うか?
  • 成功するが、余計なものがついてくる——鮭骸の群れを散らした。しかし散った骸のひとつが岸に這い上がってきた

セッション・ゼロで確認すること

トーノスには重い主題が含まれる——大量死、子供の失踪、飢餓、社会からの排除。セッションの前に、扱いたくない話題がないか確認する。

X-Card

テーブルの中央にカードを一枚置く。セッション中、誰でもいつでもこのカードに触れることができる。触れたら、今の場面は飛ばして次に進む。理由を説明する必要はない。触れるだけでいい。GMは場面を巻き戻すか、別の展開に切り替える。

「線」と「幕」

セッションの前に全員で二つのリストを作る。「線」は絶対に出さない話題。ゲームに登場しない。「幕」は起きてもいいが描写しない話題。「そういうことが起きた」とだけ言って先に進む。

特に罪喰い、神隠し、飢饉の描写は事前に確認しておくことを勧める。

PCの作り方

湖沼人はこの世界で最も冒険者に近い存在である。土地を持たず、舟を持ち、どこにも属さない。初めてこの世界で遊ぶプレイヤーには湖沼人を勧めるとよい。職業リストがそのままキャラクターの骨格になる。

すべてのPCは本業と副業を持つことを推奨する。本業はキャラクターの核になる職業。副業は別のカテゴリから選ぶと活躍の幅が広がる。水辺の職業を本業にしたなら、副業は山の職業から——といった具合に。季節や場面によって顔が変わるのが湖沼人らしさである。

平地人のPCは土地と共同体に根づいた冒険になる。山人のPCは山の専門家として、盆地の事件に巻き込まれる形が動きやすい。

職業ひとことで言うとこんなプレイヤーに
泥潜りトレジャーハンター探索と冒険が好き
藻刈り日雇い労働者巻き込まれ型の主人公をやりたい
笛吹き峠の道案内旅と出会いの物語が好き
橋守関所の番人人と交渉するのが好き
煙番山の見張り役情報と観察で動きたい

他の職業はキャンペーンが進む中で出会い、転職してもいい。

ワンショット用キャラクター(4人)

初めて遊ぶ卓や、一回きりのセッションで使えるキャラクター。そのまま使ってもいいし、下敷きにして自分のキャラクターを作ってもいい。

藻刈りの三郎

マツザクの農家の三男。冷夏の飢饉で口減らしにあい、家を出た。倉堀にたどり着き、藻刈りの日雇いをしている。怖いもの知らずではなく、怖くても動く。腹が減っている。

本業: 藻刈り
副業: なし(これから見つける)
得意: 体力仕事、水に入ること、黙って耐えること
苦手: 文字、交渉、人に頼ること

骨読みのタエ

老いた女。大洪水以前のアゾヌムを知っている数少ない人間のひとり。骨を読み、泥から揚がったものの来歴を語る。口が悪く、嘘を嫌う。

本業: 骨読み
副業: 蛭使い
得意: 鑑定、歴史の知識、まじないの心得
苦手: 走ること、愛想、新しいものを受け入れること

橋守のイサナ

猿ヶ石川の橋を守る若い女。誰を通し、誰を止めるか。橋の上で起きることはすべてイサナの管轄だが、橋を降りれば誰でもない。

本業: 橋守
副業: 霧読み
得意: 交渉、観察、人の嘘を見抜くこと
苦手: 水に入ること(泳げない)、自分のことを話すこと

煙番のチカゲ

山の上から盆地を見下ろし、煙の色で天候と人の動きを読む。山人の血を引くが、山を降りて湖沼人として生きている。寡黙で、目がいい。

本業: 煙番
副業: 茸見
得意: 遠くを見ること、天候の予測、山歩き
苦手: 人混み、大声を出すこと、嘘をつくこと

セッションの始め方

手配師アッセン

湖沼人に仕事を手配する人物。藻刈りのような日銭稼ぎから、失せ物探し、怪異の征伐まで幅広く扱う。PCがトーノスに着いたばかりで何をすればいいかわからないとき、最も自然な導入。

大同犬松

笛吹峠の麓の東屋にいる語り部。数百年を生きた長命族であり、不思議な話を語って聞かせてくれる——その話がそのまま冒険の種になる。

倉堀のケイ

十三郷で最もすぐれたまじないの使い手。困りごとを抱えた人々がケイのもとに相談を持ち込む。それもまた冒険の始まり。

セッションの雰囲気

GMには柳田國男『遠野物語』を読むことを強くすすめる。遠野物語に登場するエピソードを、トーノスの暗黒時代に置き換えてアレンジすることが、最も手軽で最も豊かなシナリオ作りになる。

まじないは日常の延長にあり、神獣は山の奥にいて、座敷童子は隣の家にいるかもしれない。超自然は特別なことではなく、生活の一部である。GMは怪異を演出するとき、恐怖よりも「ふとした違和感」を意識するとよい。

暗黒時代のトーノスに法はない。武力が正義であり、武装した百姓が自分の土地を守っている。しかしこの世界は殺伐としたダークファンタジーではない。人々は助け合い、市場で笑い、子供は遊ぶ。混沌と豊穣が共存する場所である。

魔法の詳細

プレイヤー向けガイドでは三つの魔法(まじない/魔術/精霊魔法)の概要を示した。ここではGMがセッションで使うための具体例と裁定の指針を記す。

まじないカタログ

まじないは「魔法を使います」と宣言するものではない。かまどに火をつけるとき老婆が口ずさむ言葉、子供が寝る前に母親が額に描く印——それがまじない。

判定は不要なことが多い。まじないの大半は効くか効かないかわからないまま日常に溶けている。判定するのは「ここぞ」という場面だけでよい。副作用が起きたらランダムテーブル「まじないの副作用」(d6)を使う。

天災と水のまじない

くわばら

雷鳴が聞こえたとき「くわばら、くわばら」と唱える。桑の木には雷が落ちないという言い伝えから

日常: 雷の日に子供が母親に習って唱える。最も広く知られたまじない

冒険: 嵐の中の渡河や山越えで、雷に打たれないことを祈って唱える

機転: 光り物は雷に似た光を放つことがある。くわばらを唱えると光り物が一瞬ためらう

水送り

水の流れに向かって「送る、送る、ここの水は送る」と三度唱え、流れに沿って歩く

日常: 水印師が水位の異常を見つけたとき、まず唱える。増水を止める力はないが心を落ち着ける

冒険: 道が冠水しているとき唱えながら歩けば膝より上まで水が来ない——と言われている

機転: 堰止めは「水の流れを忘れた場所」に起きる。水送りは流れの記憶を呼び覚ます言葉

氷湖鎮め

パハヤチニカの方角に向かって「鎮まれ、鎮まれ、もう一度は許さぬ」と唱える

日常: 毒水守が毎朝、山頂に向かって唱える日課

冒険: 氷湖の目が開きかけているとき、まじないで時間を稼げるかもしれない

機転: 水に関する怪異全般に対して、最後の手段として使える。「大洪水を止めるためのまじない」という格の高さが怪異を怯ませる

舟守り

舟に乗る前に舟底を三度叩いて「行きも帰りもこの舟で」と唱える

日常: 葦舟師が毎朝やる。どんなに急いでいても省略しない

冒険: 転覆しそうな場面で唱えると、舟が不思議と持ちこたえることがある

機転: メドチは舟を沈めるのが好きだが、舟守りのかかった舟には手を出しにくい

トーゼナス寺院の五学科

トーゼナス寺院の魔術は五つの学科に分かれている。寺院に入った者はまず基礎を学び、やがてひとつの学科を専攻する。暗黒時代には寺院は閉鎖的だが、知識は漏れる——破門された「崩れ魔術師」が不完全な技法を持って外の世界にいる。

鎮魂(ちんこん)

死者の魂を鎮め、送る技術。大洪水で大量の死者が出た後、最も需要が高まった学科

錆武者や泥喰いのような「怨念が形を取った存在」を鎮めるための理論と手法を研究している。まじないの「罪喰い」が民間の方法なら、鎮魂は学術的な方法

祓い(はらい)

人や場所に取り憑いたものを祓う技術。狐憑き、呪い、瘴気の浄化を扱う

まず取り憑いているものが「何であるか」を特定する。見えない敵を見る能力が祓いの核心。暗黒時代には需要が増えたが寺院から出てくる術者は少ない

護符(ごふ)

文字や図形に力を封じ込める技術。札、巻物、建築物の装飾に至るまで「書くことで守る」学科

護符は「書いた時点」で効果が固定される。まじないが毎回唱えるのに対し、護符は一度書けば持続する。ただし効果には期限があり、古い護符は力を失う

読みの術(よみのじゅつ)

未来を予見し、過去を読み解く技術。骨読み、霧読み、夢の解釈などを学術的に体系化した学科

民間の骨読みが「経験と勘」で読むのに対し、寺院の読みの術は「理論と分類」で読む。夢買いが扱う「夢」もこの学科の研究対象

禁術(きんじゅつ)

寺院が研究してはならないと定めた魔術の総称。愛の魔術、死者の復活、縛りの術

愛の魔術は人の意志を曲げる術。死者の復活は鎮魂の逆。縛りの術は精霊を強制的に従わせる技術。いずれも研究した者は追放される

精霊魔法ガイド

精霊魔法には「呪文」も「手順」もない。精霊魔法は対話である。精霊が応じなければ何も起きない。

精霊の種類

水の精霊

川、沼、泉、雨に宿る。大洪水の後、最も数が増えた精霊。水の記憶を持っており、大洪水以前のトーノスの姿を知っている

山の精霊

岩、木、霧、風に宿る。山人との関係が最も深い。獣語りが動物の言葉を翻訳できるのは、動物に宿る山の精霊と通じているから

火の精霊

かまど、焚き火、鍛冶の炉に宿る。人間の暮らしに最も近い精霊だが、最も気まぐれでもある

土の精霊

地面、泥、粘土に宿る。最も遅く、最も頑固な精霊。大洪水で水底に沈んだ土地の精霊は、まだ「沈んでいる」と思っている個体がある

裁定の三原則

1. 精霊は命令できない

まじないは唱えれば効く(かもしれない)。魔術は手順を踏めば発動する。だが精霊魔法は、精霊が応じなければ何も起きない。

2. 精霊は取引する

精霊は無条件には助けてくれない。何かを差し出す必要がある——時間、記憶、体力、あるいは約束。

3. 精霊は場所に属する

川の精霊に山の上で話しかけても応えない。精霊魔法を使うには、その精霊が宿る場所にいなければならない。

トーテムの精霊

十三郷のトーテム動物には神獣が宿っている。神獣は精霊の中でも格が違う。通常の精霊との対話が「会話」なら、神獣との対話は「謁見」に近い。神獣の名前(ズルガイシュ=ソルナーンなど)は「人の世より古い言葉」であり、名前を呼ぶことで直接語りかけることができる——ただし、軽々しく呼べば神獣は怒る。

鮭迎えの「鮭の祝詞」のように、まじないの中には精霊魔法の断片——かつて誰かが精霊と対話したときの言葉の残響——が混じっている。意味はとうに忘れられ、音だけが口伝で残っている。まじない師は知らずに精霊に語りかけていることがある。

ヒント

シナリオフック集

GMがセッションの導入に使える種を集めた。各フックは単体でも、複数を組み合わせてもよい。

一部のフックには脅威の進行を付けている。これはPCが介入しなかった場合に状況がどう悪化するかを示すもの(TRPGデザインでは「フロント」(Front)や「時計」(Clock)と呼ばれる手法)。PCの介入によって進行を遅らせたり、止めたり、加速させたりできる。

01

沈んだ財宝の引き揚げ

泥潜りが猿ヶ石川の底からアゾヌム王家の紋が入った箱を引き揚げた。中身を開ける前に、錆武者が現れて箱を守ろうとする。骨読みに見せるべきか、そのまま売るか。

02

土地の境界争い

水が引いて現れた肥沃な土地を、二人の平地人が同時に主張している。傀儡政権に裁定能力はなく、双方が武装し始めた。PCは仲裁者として雇われるか、どちらかの側につくか。

脅威の進行

  1. 1.双方が境界に杭を打つ
  2. 2.一方が相手の作物を踏み荒らす
  3. 3.武装した親族が集まり始める
  4. 4.夜中に刃傷沙汰が起きる
  5. 5.片方の家が焼かれ、報復の連鎖が始まる

ランダムテーブル

即興でセッションを回すための道具。ダイスを振って場面に変化をつける。

d6 水辺の異変

1泥の中から何かが浮いてきた。金属の光沢がある
2水位が急に変わった。昨日まで膝だった場所が腰まである
3霧の中に人影が見える。近づくと消える
4川の水が赤く濁っている。上流で何かが起きた
5水底から音が聞こえる。甲冑がこすれるような音
6魚が一匹も見えない。水面が鏡のように静まりかえっている

d6 一日市の揉め事

1市松模様の布を広げた売り手に、傀儡政権の兵が詰め寄っている
2泥潜りが売りに出した品を「うちの家の物だ」と平地人が主張する
3値段の吊り上げ。山から降りてきた薬草が、いつもの三倍の値で売られている
4スリ。腕のいい湖沼人の子供が、客の懐を狙っている
5ナンバスの商人が妙に安い塩を売っている。何か裏がある
6市場の片隅で罪喰いが座っている。近くに死者が出たらしい

d6 道中の出会い

1葦舟師が情報をくれる。ただし対価を求める
2煙番が山の上から警告の煙を上げている
3罪喰いが道端に座っている。話しかけると不吉なことを言う
4平地人の武装した一団が境界の見回りをしている。通すかどうかはPC次第
5霧読みが立ち止まって空を見ている。天候が変わる兆しだという
6大同犬松がいつもと違う場所にいる。何かを待っている

d6 まじないの副作用

1まじないの言葉が耳の奥に残る。しばらく他の音が聞こえにくい
2手が震える。握力が戻るまで半日かかる
3まじないの対象ではないものまで影響を受けた。近くの火が消える、水が凍る
4術者の髪が一房だけ白くなる
5その場に霊華蛾が一匹寄ってくる。記憶がほんの少し曖昧になる
6まじないは効いた。ただし代償を後で請求される——誰に、何を、いつかはわからない

d6 天候の変化

1濃霧。五歩先が見えない。音だけが頼り
2冷たい雨。泥が膝まで来る。移動が困難
3突然の晴れ間。霧が引き、盆地が一望できる。見えてはいけないものも見える
4雷。パハヤチニカの方角が光る。山人は「四女が怒っている」と言う
5風が止む。水面が完全な鏡になる。不気味な静けさ
6季節外れの雪。モノヌプリの方角からだけ降ってくる

十三郷の神獣

十三郷それぞれのトーテムには、太古から生き続ける神獣がいる。真の名はトーノスのいかなる言語にも属さない、人の世より古い響きを持つ。真の名をすべて口にするのは、生死にかかわる場面だけである。

トーテム神獣の真名意味
ヨコダスサケズルガイシュ=ソルナーン生まれた水を忘れぬ者
マツザクキツネファズグリス=モーヴェナル黄昏に溶ける者
アオザスシカアルシェノール=ガヴァシス落として生やす者
ツチブクカエルヌルグシャス=ヴォーティル淵の底の目
カミゴルカモシカストゥルヴァス=ナーグレン岩を問う蹄
ミヤモルミミズクウルシャノス=ヴェーグリス闇を聴く者
タゾベルクマグロスヴァルガス=ドゥーモラン冬を腹に蓄える者
マスザルヘビネヴルガス=トゥルモーシュ沢底の螺旋
アヤオルクモアスヴェルノス=ギルシャーン最初の糸
オトモスワシクルグシャール=ゼイヴォーラン風を掴んで昇る者
ツキモスウマドゥルヴァノス=ガシュレーン従いて従わぬ者
オイデスオオカミガルシュヴァス=トゥルモーガンはぐれた子を追う者
ツチムルムカデザクルソゴス=モルザール毒と薬の境

用語集

プレーヤー向けガイドに載っていない、GMが知っておくと便利な用語。

国名・家名

名前綴り説明
アゾヌムAzonumトーノスを治める領主家。阿曽沼家のこと
ナンバスNanbasトーノスを含む広域の王国。南部藩のこと
ゼンダスZendas南方の大国。仙台藩のこと
オーツOtz海沿いの港町にある大槌家のこと
カザイKazaiナンバスの南方にあった勢力。葛西家のこと
セタムSetam山間の有力家。世田米家のこと
ヒワタスHiwatas山中の集落にある火渡家のこと

事物・概念

名前読み説明
霊華れいか神話の中心にある聖なる花
オマクおまく死者の霊。人間の思いが凝って現れたもの
湖霊こだま精霊の伝言手段
シルマシしるまし凶兆
ひょうはくきり語り部。トーノスの歴史は文字ではなくこの者の声に保存されている
百足切丸むかできりまるアゾヌム家の伝説の刀。大ムカデを退治した。現在は行方不明

外来の事物

名前綴り説明
インモルタルInmortal長命族を外来語で呼んだもの
ブルヘリアBrujeria精霊魔法を外来語で呼んだもの
グラディウスGladius
ダガDaga短剣
ロザリオRosario祈りの道具

トーノスではアゾヌム紀を用いる。アゾヌム家がトーノスを治め始めた年を元年とする。

出来事アゾヌム紀西暦和暦
アゾヌム家、トーノスを治め始める元年1189年文治5年
大洪水(暗黒時代の始まり)412年1600年慶長5年
清心紀の始まり(暗黒時代の終わり)439年1627年寛永4年

道具屋と金物店

暗黒時代のトーノスには、侍が出入りするような刀鍛冶はもういない。代わりにあるのは、ナバクの一日市に並ぶ道具屋や金物店である。

ここで売られているものは武器ではない。湖沼人の暮らしに必要な刃物、音具、水具、農具、そして海の向こうから流れてきた品々だ。ただし暗黒時代には、暮らしの道具がそのまま身を守る手段になる。怪異との対決で道具が役立つかどうかは、使う者の機転とGMの裁定次第である。

価格の読み方

価格はダガを基準とする。ダガ=10

あなたのシステムでダガ(ダガー/ナイフ/短剣)の価格を調べ、10で割る。それが1単位の価値になる。表の数字にその単位をかければ、すべての品目の価格が出る。

例: D&D 5eならダガ=2gp。1単位=0.2gp。エスパダ=50×0.2=10gp。流れ刀=100〜200×0.2=20〜40gp。

幅のある価格(30–80など)は、品物の状態や売り手の気分によって変わる。GMが「今日の店にはどんな状態のものがあるか」を決めてから値段をつけるとよい。

品目一覧

1. 刃物

ダガ(Daga)
だが価格: 10

湖沼人なら誰でも一本持っている。紐を切る、魚をさばく、葦を刈る

冒険: 護身用。片手で使える唯一の武器

機転: 錆武者の鎧の隙間に差し込める唯一のサイズ。大きな武器では逆に当たらない

藻刈り鎌
もかりがま価格: 5

水草や藻を刈る仕事道具。刃は三日月型で薄い

冒険: 水中の障害物を切り払える。葦舟が絡まったとき必須

機転: 泥喰いの「核」(溺死者の記憶の断片)を、泥ごと掬い出すように刈り取れる。突いても斬っても泥は再生するが、「刈る」動作なら根ごと抜ける

錆起こし
さびおこし価格: 15

錆落としの職人道具。古い金属の錆を細かく削り起こす小刀

冒険: 錠前や蝶番の錆を落として、沈んだ建物の扉を開ける

機転: 錆武者は「錆に宿る怨念」。錆起こしで錆を物理的に剥がせば、怨念の依代ごと削れる。ただし一体分の錆を落とすには一晩かかる——だから交渉や逃走と組み合わせる

骨割り
ほねわり価格: 30

骨読みが骨を割って断面を見るための楔型の小刀

冒険: 固い素材をこじ開けるのに使える

機転: 鮭骸(死んだ鮭の集合体)の中核にある「帰れなかった年の骨」を見つけて割れば、群れが散る。骨読みの技能と組み合わせて初めて活きる

2. 武器

手鉾
てぼこ価格: 20

橋守や旗屋が持つ短い槍。柄は木、穂先は鋳鉄。刀より安く、扱いも簡単

冒険: 湖沼人が手に入れられる最も「武器らしい武器」。リーチがある。舟の上から水中を突くにも使える

機転: 錆武者に対して間合いを取れる唯一の道具。ただし穂先が鋳鉄なので、鋼の鎧には何度も突けば折れる

投げ礫
なげつぶて価格: 1–2

河原の石を革紐で包んだもの。子どもの遊びでもあり、鳥追いの道具でもある

冒険: 遠距離から音を立てる、注意を引く、威嚇する

機転: 鮭骸のような「大きいが脆い集合体」に投げ込めば、衝撃で一時的に形が崩れる。倒せはしないが、時間を稼げる

価格品目
1–2投げ礫、骨鏃、葦綱、脂石
5藻刈り鎌、泥手、市松布
10ダガ
15錆起こし、鈴縄、畝打ち
20鶴嘴、連枷、鳶口、手鉾、蛭壺
30霧笛、虫笛、沈み灯、蚕棚、骨割り、オンダ
50ハチャ、エスパダ
30–80折れ刀、拵えなし
50–80丸木弓
100–200流れ刀
名なし札

GMへの注記

「武器」は売っていない

この店に並んでいるものは、あくまで道具である。ダガは紐を切るためのもの、鶴嘴は溝を掘るためのもの、エスパダでさえ「海の向こうの船乗りの道具」として入ってきた。暗黒時代のトーノスでは、暮らしの道具と身を守る手段の境界が曖昧になっている。

「機転」は確定した効果ではない

各品目に書かれた「機転」は、言い伝え、噂、理屈の上ではそうなるはず——という程度のものである。プレイヤーが「これを使ってみたい」と言ったとき、GMが「面白い、やってみろ」と応じるための種であって、必ず成功する効果ではない。

職能と道具はセットである

道具だけ買っても使いこなせない場面がある。骨割りは骨読みの技能がなければ「ただの楔」であり、蛭壺は蛭使いでなければ「ただの壺」である。これがパーティ内の役割分担を生む。

怪異の分類に対応している

戦闘型の怪異(錆武者、泥喰い)には物理的な道具で。交渉・儀式型の怪異(座敷童子、御退屈様)には音や信仰の道具で。環境型の怪異(霊華蛾、光り物)には火や灯りで。呪い型の怪異(狐憑き、双つ身)には浄化や名前の力で。ただし、どの道具も怪異を完全には退けられない。対処と共存の間で判断するのが、トーノスの冒険である。

既存システムへの組み込み

「遠野洲戦記」は特定のルールシステムに依存しないワールドガイドである。いま手元にあるシステムのルールブックと、このワールドガイドだけで遊び始めることができる。

なぜトーノスは「どのシステムでも遊べる」のか

三つの魔法体系(まじない/魔術/精霊魔法)が、ほとんどのシステムの魔法分類にそのまま対応する

三つの民(平地人/山人/湖沼人)と豊富な職業が、クラスやバックグラウンドの代替になる

王のいない暗黒時代という設定が、PCが自由に動く理由を自然に与える

D&D 5e / 5.5e で遊ぶ

D&Dのプレイヤーは「クラス」「種族」「バックグラウンド」の三点でキャラクターを掴む。トーノスはこの三点すべてに対応を持っている。

種族の読み替え

D&Dの種族トーノスでの解釈
ヒューマン人間族(平地人/山人/湖沼人のいずれか)
エルフ/ハーフエルフ長命族(インモルタル)。数百年を生きる大同犬松のような存在
ハーフリング体格の小さい湖沼人。舟で水路を行き来する暮らしにぴったり
ドワーフ山人の金属技術者。山から金を掘り精製する一族

クラスと魔法の対応

トーノスの魔法D&Dのクラスポイント
まじないバード、レンジャー誰でも知っている口伝の生活魔法。キャントリップ+低レベル呪文で表現
魔術ウィザードトーゼナス寺院で学んだ体系的魔法。スペルブックが寺院の秘伝書
精霊魔法ドルイド、ソーサラー素質に依存。ソーサラーの「生まれつきの力」と相性がいい

D&Dは高レベルになると派手になりすぎる。トーノスの「ふとした違和感」を維持するなら、レベル1〜7程度のローレベル帯で遊ぶのがいい。水底に沈んだアゾヌム王家の城がそのままダンジョンになる。錆武者はアンデッド、泥喰いはゴーレムとして処理できる。

クトゥルフの呼び声で遊ぶ

怪異と伝聞の語り口がCoCと噛み合う。ただし、ポイントはクトゥルフ神話を持ち込まないこと。トーノスの怪異はトーノスの論理で動く。

探索者の職業技能

湖沼人の職業CoCでの職業技能の中心
泥潜り水泳、目星、手先の器用、鑑定
骨読みオカルト、歴史、鑑定、説得
霧読み自然、追跡、聞き耳、天文学
神隠し探し追跡、目星、オカルト、ナビゲーション
蛭使い医学、薬学、自然、応急手当
罪喰いオカルト、精神分析、説得、忍び歩き

正気度(SAN)の使い方

  • 氷湖の目 — SANチェックは山頂で目を見た瞬間だけ。それまでの道中は「なんとなくおかしい」の積み重ね
  • 鮭骸 — 川底で蠢く巨大な塊を見る。1/1d6程度。倒せない、逃げるしかない
  • 双つ身 — 自分と同じ姿の者に出会う。0/1d3。恐怖より不気味さ

ウォーハンマーFRP(WFRP)で遊ぶ

帝国の辺境、腐敗した権力、泥と血にまみれた冒険者——暗黒時代のトーノスとほぼ同じ匂いがする。最も相性がいいシステムのひとつ。

キャリアの対応

湖沼人の職業WFRPのキャリア例
泥潜り墓荒らし → 盗賊 → レンジャー
葦舟師船頭 → 密輸人 → 商人
市松売り行商人 → 詐欺師 → 扇動家
錆落とし職人 → 鍛冶屋 → 武器匠
罪喰い司祭見習い → 苦行者 → 魔女狩人

混沌をどう扱うか

混沌の神々は不要。代わりに四女(カゲ様)の怒りがその役割を果たす。恩恵と災厄は同じ手から来る——これはウォーハンマーの混沌そのもの。

  • 堰止め = 混沌の小さな顕現
  • 泥喰い = 腐敗した死者のアンデッド
  • 霊華蛾 = 混沌変異の変種

ソード・ワールド 2.5 で遊ぶ

日本のTRPGプレイヤーにとって最もアクセスしやすいファンタジーシステムのひとつ。

三つの魔法とSW2.5の対応

トーノスの魔法SW2.5の技能解釈
まじないレンジャー技能 + 一部プリースト民間の口伝。生活のあらゆる場面に浸透
魔術ソーサラー/コンジャラートーゼナス寺院で学ぶ体系的な魔法
精霊魔法フェアリーテイマー精霊の声を聞く素質に依存する点もそのまま一致

SW2.5はパーティ冒険に向いている。湖沼人のPC4人がアッセンから仕事を受ける——これが最も自然な導入。SW2.5の「冒険者の宿」をアッセンの手配所に読み替えるだけでいい。

シノビガミで遊ぶ

シノビガミは忍者TRPGだが、その本質は秘密と関係性のドラマ。王のいない混沌の時代はシノビガミの「秘密」システムと噛み合う。

  • 各PCに秘密を持たせる:「実はアゾヌム残党」「実はナンバスの間者」「実はクーデター実行者の血縁」
  • 忍法をまじない/精霊魔法に読み替える:忍法の演出をトーノスの魔法に変換
  • 感情:シノビガミの感情ルールで、平地人/山人/湖沼人の間の不信と依存を表現

シナリオ例:ナバクの一日市を舞台に、市松売りが広げた布をめぐって、アゾヌム残党/傀儡政権/ナンバスの密偵/湖沼人の盗人がそれぞれの思惑で動く。全員が秘密を持っている。

りゅうたまで遊ぶ

りゅうたまは「旅」と「季節」と「天候」のTRPG。トーノスの「水のクニ」は、まさに天候と季節がすべてを左右する世界。

  • :水が引き始め、泥の中から財宝が現れる。藻が芽吹く
  • :霧が薄れ、盆地に日が差す。一日市が最も賑わう季節
  • :鮭が遡上する。鮭迎えの祝詞が川に響く。収穫と帰郷の季節
  • :雪と凍結。山人は山にこもり、湖沼人の水路が閉ざされる

りゅうたまの旅人は「十三郷を巡る」ことがそのまま冒険になる。GMキャラクター「竜人」は、大同犬松(長命族の語り部)に置き換えるとよい。数百年を生きた語り部が旅人たちの物語を記録する——りゅうたまの世界観と一致する。

どのシステムでも共通する五つの原則

1. 水を描写に入れる

どんな場面でも水の存在を忘れない。足元が湿っている。朝霧が立っている。遠くで蛙が鳴いている。乾いた場所でさえ「かつてここは水の底だった」という記憶がある。

2. 神獣は倒さない

角が十二に枝分かれした白い雄鹿を見た——それだけで物語になる。神獣は畏れる対象であり、出会ったこと自体が事件。

3. 職業で人物を語る

NPCを紹介するとき「レベル5のファイター」ではなく「泥潜りの男。左手の指が一本足りない。それは泥の中で何かに噛まれた痕だ」と言う。

4. まじないは日常にある

かまどに火をつけるとき老婆が口ずさむ言葉、子供が寝る前に母親が額に描く印——それがまじない。描写だけでいい。

5. 「どちらの側にもつける」状況を作る

傀儡政権に正義はない。しかしアゾヌム残党にも正義はない。PCが「正解」を選ぶのではなく「自分の正義」を選ぶ。

はじめの一歩

いま手元にあるシステムのルールブックと、このワールドガイドだけで始められる。

  1. PCは全員湖沼人にする
  2. 職業をひとつ選ぶ(迷ったら泥潜り)
  3. 手配師アッセンから最初の仕事を受ける
  4. 舞台はナバクの一日市倉堀

これだけで最初のセッションが回る。システムは何でもいい。トーノスの空気を作るのはルールではなく、水と霧と、どこにも属さない人々だから。

命名ガイド——四層構造

この世界の固有名詞は四つの層で構成されている。名前の響きだけで、それがどの層に属するかを直感できるように設計されている。

用途響き
第一層
架空古語
国/家/城/村どこの言葉でもない古代的な響きトーノス、ナバク、アオザス
第二層
土着語
山/川/峠/霊的概念遠野方言/アイヌ語の響きパハヤチニカ、メドチ、オマク
第三層
外来語
海の向こうの物/概念スペイン語/ポルトガル語/ラテン語ロザリオ、ブルヘリア
第四層
ゲームの言葉
種族名/分類英語/現代日本語Lakefolk、長命族

リポジトリ

「遠野洲戦記」の原稿はすべてGitHubで公開されています。Claude Code Pluginとしてインストールすれば、世界設定を踏まえたシナリオ作成・NPC生成・怪異の創作などにAIを活用できます。

Claude Code Plugin

Claude Codeのプラグインとしてインストールできます。世界設定・キャンペーンシナリオをまるごと参照しながら、シナリオ作成・NPC生成・怪異の創作などにAIを活用できます。

/plugin marketplace add sasakill/dark-age-of-tonos
/plugin install dark-age-of-tonos

Git Clone

git clone https://github.com/sasakill/dark-age-of-tonos.git

本作品は Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) ライセンスのもとで公開されています。クレジットを表示すれば、営利・非営利を問わず、自由に利用・改変・再配布できます。

仲間募集

JOIN

絵を描く、文章を書く、ゲームを遊ぶ、調べ物をする。
あなたの得意なことから参加できます。
お気軽にご連絡ください。

このページをシェア